【47都道府県 民泊マーケットレポート 第1弾】北海道|民泊の届出全国2位、勝負は札幌の外にある|工務店・不動産会社の参入戦略(minpac式)
結論:北海道は、民泊の届出住宅数が全国2位、1件あたりの稼働も全国平均を上回る「民泊が根づいた地域」です。
参入するなら、道央(登別・苫小牧・洞爺湖)での新築民泊と、道南(函館)での空き家リノベ民泊が有望と考えられます。
一方、最大の市場である札幌は、条例による営業日の制限と民泊の集中があり、新たに物件を持つ参入には向きません。2026年は道全体の宿泊者も前年を下回っており、エリアと型の選び方がこれまで以上に重要です。
連載「47都道府県 民泊マーケットレポート」は、民泊事業への参入を考える工務店・不動産会社の経営者に向けて、各県の民泊市場を同じ物差しで分析するシリーズです。第1弾は、民泊の規模が全国でも大きく、エリアごとの性格がはっきり分かれる北海道を取り上げます。
この記事で分かることは次の3点です。
- 北海道の民泊市場が、全国のなかでどの位置にあるか
- 道内9エリアのうち、どこが参入に向いているか
- 新築・空き家リノベ・運営代行・自社保有のどの型で参入すべきか
本記事は、観光庁・総務省・北海道などが公表している無料の公開データだけで分析しています。使ったデータの対象期間と公表日は次のとおりです。いずれも2026年10月7日時点で入手できた最新の公表資料です。

第1章 minpac式・民泊市場の座標
北海道は「宿泊需要・民泊の供給・民泊の稼働」の3つがそろって全国上位の、数少ない地域です。民泊がすでに事業として成り立っている市場だと言えます。

最新の2026年1〜7月の延べ宿泊者数は2,423万人泊で、東京都・大阪府に次ぐ全国3位です(観光庁「宿泊旅行統計調査」第2次速報値)。年間で見ても、2025年は4,650万人泊で全国3位でした。
外国人の延べ宿泊者数は729万人泊で全国4位です。宿泊者に占める外国人の割合は30.1%で全国5位と、全国平均(27.5%)を上回ります。
民泊の届出住宅数は4,632件で、東京都に次ぐ全国2位です(2026年9月15日時点)。札幌市が独自に受け付けている3,103件と、道が受け付けている1,529件の合計です。
民泊1件あたりの稼ぎやすさを示す「minpac式・民泊稼働指数」は、年106.8日で全国5位です。全国平均の105.3日をわずかに上回り、民泊新法の上限である180日に対しては59%の水準です。
minpac式・民泊稼働指数とは 観光庁が2か月ごとに公表する「住宅宿泊事業の宿泊実績」から、届出住宅1件あたりの宿泊日数を1年分(6期)合計した、本シリーズ独自の指標です。届出だけして休止している住宅も分母に含むため、実際に営業している物件の稼働はこれより高いと考えられます。
一方、民泊に近い小規模な宿である簡易宿所の客室稼働率は25.2%で、全国平均(29.6%)を下回ります(2025年)。需要は大きいものの、小規模な宿どうしの競争も激しいことがうかがえます。
■ minpac式 3行要約
- 延べ宿泊者数は2026年1〜7月で2,423万人泊、全国3位
- 民泊の届出は4,632件で全国2位、稼働は年107日で全国5位
- 需要・供給・稼働がそろう一方、小規模な宿の競争は激しい
第2章 規制マップ
北海道では、道と札幌市がそれぞれ条例で民泊の営業を制限しています。家主が住んでいない住宅で営業する場合、住居専用地域などでは実質的に週末と年末年始しか営業できません。参入する場所の用途地域が、収益を大きく左右します。

道の条例では、知事が指定した市町村の区域で、次の2つの制限があります(観光庁による各自治体の条例のとりまとめ)。
- 小中学校などの出入口から100m以内:授業がある日は営業できません
- 住居専用地域など:土日・祝日・年末年始以外は営業できません
札幌市も同じ考え方の条例を持ち、学校の周囲100m以内と住居専用地域で営業日を制限しています。
これらの制限が適用されるのは、次のいずれかに当たる民泊です。
- 家主が届出住宅に住んでいない
- 宿泊者がいる間、家主が不在になる
- 宿泊に使う部屋が5室を超える
裏返せば、家主が住みながら一部屋を貸す「家主居住型」は、これらの制限を受けません。また、指定は市町村ごと・区域ごとに行われています。道の民泊ページ(2026年6月25日更新)で、小樽市・ニセコ町・倶知安町・千歳市・登別市など指定された市町村と区域の地図を確認できます。
もう一つの変化が、2026年4月に導入された北海道宿泊税です。ホテル・旅館と同じく、民泊も課税の対象です。宿泊料金に応じて宿泊者から預かり、事業者が納める仕組みのため、運営の手間と価格設定に影響します。倶知安町は町独自の宿泊税を課しており、道と調整のうえ運用しています。
工務店・不動産会社にとっては、次の3つの選択肢が考えられます。
- 制限のない地域を選ぶ:商業地域や、知事の指定がない区域の物件で民泊新法の180日を使い切る
- 簡易宿所の許可を取る:旅館業法の許可を取れば、日数の上限と条例の制限を受けません。用途地域と建築基準法の確認が必要です
- 家主居住型で始める:自宅の一部を貸す形なら、住居専用地域でも営業できます
本章の内容は2026年10月7日時点で確認したものです。条例の対象区域は変わることがあるため、事業化の前に道・札幌市・各市町村の担当部署へ必ず確認してください。
■ minpac式 3行要約
- 道と札幌市の条例で、住居専用地域は実質週末のみの営業になる
- 制限は家主不在型が対象。家主居住型や指定外の区域は対象外
- 2026年4月から宿泊税が始まり、民泊も課税対象になった
第3章 宿泊需要の構造
北海道の宿泊需要は、外国人の伸びに支えられて過去を上回る水準に達しました。ただし2026年は減少に転じており、エリアによって「誰が・いつ泊まるか」も大きく異なります。

延べ宿泊者数は、2019年の3,698万人泊から2021年に1,906万人泊まで落ち込みました。その後は回復し、2025年は4,650万人泊と、2019年を26%上回りました。
伸びを支えたのは外国人です。2025年の外国人は1,330万人泊で、2019年(881万人泊)の1.5倍になりました。一方、日本人は2024年の3,432万人泊から2025年は3,320万人泊に減っています。

月別では、最も多い8月が502万人泊、最も少ない4月が261万人泊でした。この差を示す「minpac式・季節偏在度」(最大月÷最小月)は1.92倍です。夏と冬の観光シーズンに需要が集まり、雪解けの4月と晩秋の11月が谷になります。
2026年に入ってからの動きも確認します。

2026年1〜7月の延べ宿泊者数は2,423万人泊で、前年同期の2,633万人泊に対し92.0%でした(第2次速報値)。同じ期間の全国は95.3%で、北海道は全国より落ち込みが大きくなっています。7か月すべてで前年を下回り、特に1月は87%でした。
なお、宿泊旅行統計調査は2026年1月分から集計方法(調査対象の区分け)が変わっています。前年との比較は傾向をつかむ参考値として扱ってください。
県内を9つのエリアに分けると、姿はさらにはっきりします。

観光庁は、北海道を9つのエリアに分けて宿泊者数を公表しています。
- 石狩(札幌・千歳・北広島など):2,053万人泊。道全体の44%を占め、外国人が35%です
- 後志(ニセコ・小樽・倶知安など):550万人泊。外国人が40%と、9エリアで最も高い割合です
- 上川(旭川・富良野・美瑛など):504万人泊。外国人は27%です
- 道央(登別・苫小牧・洞爺湖・岩見沢など):456万人泊。外国人は23%です
- 道南(函館・七飯など):377万人泊。外国人は23%です
残る道東(釧路・根室)・オホーツク・十勝・留萌・宗谷は、それぞれ93万〜221万人泊で、外国人は4〜12%と国内客が中心です。
2026年からは、主な市町ごとの宿泊者数も公表されるようになりました。対象は客室20室以上の施設に限られます。

札幌市が601.8万人泊と別格で、函館市91.6万人泊、旭川市72.9万人泊が続きます。外国人の割合は、倶知安町が約7割、登別市が約45%、札幌市が約39%と、市町によって大きく異なります。

季節の波もエリアで大きく異なります。石狩(1.58倍)と道央(1.63倍)は比較的安定しています。一方、後志は冬の2月に、上川は夏の7月に需要が集中し、季節偏在度はそれぞれ3.66倍、3.48倍です。留萌・宗谷は7.23倍と、夏以外の需要がほとんどありません。
北海道の観光統計では、2024年度の観光客(実人数)4,964万人のうち、宿泊客は1,589万人で32.0%でした(北海道「観光入込客数調査報告書」)。本シリーズではこれを「minpac式・宿泊転換率」と呼びます。道内客の日帰り観光が多いため、広い北海道でも宿泊につながる割合は高くありません。
■ minpac式 3行要約
- 2025年は4,650万人泊で2019年比126%。外国人が伸びを支えた
- 2026年1〜7月は前年同期比92.0%で、全国(95.3%)より弱い
- 後志は冬、上川は夏に集中し、季節偏在度は3倍を超える
第4章 民泊の供給と稼働の実態
北海道の民泊は、4年で約2.4倍に急増しました。稼働は全国平均並みを保っていますが、供給の伸びが需要を上回る状態が続けば、1件あたりの稼働は下がると考えられます。

届出住宅数は、2022年9月の1,920件から、2026年9月には4,632件まで増えました。このうち札幌市が3,103件で、道全体の67%を占めます。民泊は札幌に強く集中しています。

民泊1件あたりの年間宿泊日数は、東京都が126日、福岡県が124日、京都府が108日です。北海道は107日で、全国平均(105日)をわずかに上回ります。
民泊の宿泊者は、1年間で44.1万人、延べ116.4万人泊でした(2025年8月〜2026年7月)。宿泊者のうち日本国籍は36.9%で、6割以上が外国人です。1人あたり平均2.6泊と、短期の週末利用より長めの滞在が多い傾向です。
供給の厚さも確認します。民泊(4,632件)と簡易宿所(1,590施設)を合わせた小規模な宿の数を、延べ宿泊者数100万人泊あたりで比べると、北海道は約134、全国は約97です。本シリーズではこれを「minpac式・供給圧力」と呼びます。宿泊需要に比べて、小規模な宿はすでに多い状態です。
つまり北海道は、民泊が事業として成り立っている一方、供給はすでに厚い市場だと考えられます。新規参入では「どこに、どんな宿をつくるか」で既存の民泊と差をつけることが欠かせません。
■ minpac式 3行要約
- 届出住宅は4年で1,920件から4,632件へ、約2.4倍に急増
- 稼働指数は年107日で全国平均並み。宿泊者の6割以上が外国人
- 供給圧力は全国の約1.4倍。既存の民泊との差別化が前提になる
第5章 minpac式エリア評価
道内9エリアを「minpac式エリア参入スコア」で採点すると、Aランクのエリアはありませんでした。道央(76点)、道南(72点)、石狩(68点)がBランク、5エリアがCランク、留萌・宗谷がDランクです。

minpac式エリア参入スコアとは エリアごとに「泊まる需要」「季節の安定」「規制のゆるさ」「競合の余地」「物件の調達しやすさ」の5項目を5段階で採点し、100点に換算した本シリーズ独自の評価です。80点以上をA(重点参入)、65〜79点をB(条件付きで参入)、50〜64点をC(型を絞って検証)、49点以下をD(参入は慎重に)としています。
「競合の余地」は、札幌市の民泊件数だけが別に公表されているため、民泊が集中する石狩を2点、そのほかのエリアを3点としています。

周辺の集客資源:宿泊者を呼び込める目的地
エリアを選ぶときは、統計の数字に加えて「宿泊者が周辺で何をして過ごすか」も重要です。宿だけで客を集めるより、すでに人が集まる場所の近くに宿を置き、その来訪者を泊まり客に変えるほうが、集客の負担が小さいからです。北海道の観光統計から、市町村別の観光客数を整理しました。

各エリアの評価では、これらの資源を民泊にどう生かせるかもあわせて示します。
道央(登別・苫小牧・洞爺湖・岩見沢):76点・Bランク
需要タイプは「温泉・保養型」です。延べ宿泊者数は456万人泊(2025年)で、季節偏在度は1.63倍と、石狩に次いで安定しています。新千歳空港に近い苫小牧市から、登別・洞爺湖の温泉地までを含むエリアです。
空き家率は登別市18.0%と、道平均(15.6%)を上回ります(2023年、住宅・土地統計調査)。需要・季節・物件のバランスが最もよいエリアと考えられます。
使える周辺資源:登別市(観光客334万人、宿泊108.6万人泊)、洞爺湖町(228万人、64.6万人泊)、苫小牧市(289万人)、白老町(232万人)と、温泉と観光地が連なっています(2024年度)。「1日目は登別、2日目は洞爺湖」のように温泉地をめぐる旅の中継点に、家族やグループで泊まれる一棟貸しを置く形が考えられます。
道南(函館・七飯・北斗):72点・Bランク
需要タイプは「都市滞在型」です。延べ宿泊者数は377万人泊(2025年)で、季節偏在度は1.95倍です。函館市の宿泊客延べ数は2024年度に472.7万人泊と、前年度から20.3%増えました。
最大の強みは物件の調達しやすさです。函館市の空き家率は19.3%で、今回確認した道内の主な市で最も高い水準です。古い町並みが残る函館では、空き家を改修して「泊まる目的」をつくる民泊が工務店の強みを生かせると考えられます。
使える周辺資源:函館市(観光客602万人)と七飯町(215万人)が中心です(2024年度)。函館の夜景や朝市、歴史的な町並みは、徒歩や路面電車でめぐれる範囲にまとまっています。車がなくても1泊2日〜2泊3日の滞在が組みやすい点が、他のエリアにない強みです。
石狩(札幌・千歳・北広島):68点・Bランク
需要タイプは「都市滞在型」と「空港前泊型」です。延べ宿泊者数は2,053万人泊(2025年)で道全体の44%を占め、季節偏在度も1.58倍と安定しています。
一方、民泊の届出は札幌市だけで3,103件と道全体の67%に達し、競争は最も激しいエリアです。札幌市の条例で住居専用地域の営業も制限されています。新たに物件を持つより、既存の物件オーナーから管理を受託する運営代行の市場として捉えるほうが現実的です。
使える周辺資源:札幌市(観光客1,526万人、宿泊1,720.8万人泊)に加え、北広島市(537万人)は球場を中心とした施設の入込が好調で、2018年度の4倍以上に増えました(2024年度)。千歳市(185万人)は新千歳空港の玄関口です。試合やイベントの日程に合わせた価格設定が、運営代行の収益を左右します。
後志(ニセコ・小樽・倶知安):52点・Cランク
需要タイプは「スノーリゾート型」です。延べ宿泊者数は550万人泊(2025年)で、外国人が40%を占めます。ただし季節偏在度は3.66倍と、冬への集中が際立ちます。
倶知安町では空き家のうち別荘などの二次的住宅が約4分の1を占め、外国資本による開発が進む地域です。土地の価格は道内の他地域より高い傾向があると考えられ、事業化の前に地価公示などで確認が必要です。
使える周辺資源:小樽市(観光客807万人、宿泊118.8万人泊)、倶知安町(88.4万人泊)、ニセコ町(58.1万人泊)が中心です(2024年度)。冬の高価格帯に絞った新築ヴィラなど、型を限定して検証する価値があります。
上川(旭川・富良野・美瑛):60点・Cランク
需要タイプは夏の「自然体験型」です。延べ宿泊者数は504万人泊(2025年)と大きいものの、季節偏在度は3.48倍で夏に集中します。
使える周辺資源:旭川市(観光客487万人、宿泊103.2万人泊)、美瑛町(269万人)、富良野市(185万人、86.4万人泊)、占冠村(68.4万人泊)が中心です(2024年度)。夏の花畑と冬のスキーを組み合わせ、2つの季節に泊まる理由をつくれるかが課題です。
道東・十勝・オホーツク:60〜64点・Cランク
いずれも国内客が中心で、外国人は1割前後です。延べ宿泊者数は185万〜221万人泊(2025年)、季節偏在度は2.05〜2.46倍です。
使える周辺資源:釧路市(観光客456万人、宿泊131.7万人泊)、帯広市(231万人、115.8万人泊)、音更町(256万人)、網走市(39.6万人泊)、斜里町(37.2万人泊)などです(2024年度)。釧路市の空き家率は19.1%と高く、物件は手に入れやすいと考えられます。自然体験や食と組み合わせた空き家リノベで、小さく検証する型が向きます。
留萌・宗谷(稚内・利尻・礼文):48点・Dランク
延べ宿泊者数は93万人泊(2025年)と最も少なく、季節偏在度は7.23倍です。夏以外の需要がほとんどないため、宿泊事業だけで収支を合わせるのは難しいエリアです。
■ minpac式 3行要約
- Aランクはなく、道央(76点)・道南(72点)・石狩(68点)がB
- 札幌は需要最大だが、競争と条例の制限で新規の物件取得は不利
- 後志と上川は季節偏在が3倍超で、型を絞った検証が前提
第6章 参入の型別戦略と収支3ケース
工務店・不動産会社にとっての最適解は、エリアごとに異なります。本シリーズでは、参入の型を「新築民泊」「空き家・中古リノベ民泊」「運営代行・管理」「自社保有での運営」の4つに分けて評価しています。

新築民泊(企画・施工):道央が最有力
季節の波が小さく、温泉地と空港に近いエリアです。登別・洞爺湖の温泉めぐりを前提に、4〜8人で泊まれる一棟貸しを企画し、投資家に販売する形が考えられます。北海道では断熱・暖房・凍結対策が宿の評価を左右します。寒冷地の住宅を手がけてきた工務店の技術が、そのまま差別化になります。
後志(ニセコ)での新築は、冬の高価格帯に絞れば成り立つ可能性があります。ただし土地の価格と季節偏在を踏まえ、慎重な検証が必要です。
空き家・中古リノベ民泊:道南(函館)が最有力
空き家が多く、徒歩でめぐれる観光資源が集まる函館は、改修で物件の魅力を引き出す民泊に向きます。道東の釧路や、上川の旭川も候補になります。
運営代行・管理:石狩(札幌)が最有力
民泊の4,632件のうち3,103件が札幌市に集中しています。清掃・鍵の受け渡し・緊急時の駆けつけ・予約管理を請け負う運営代行は、物件を持たずに参入できる型です。賃貸管理を手がける不動産会社であれば、既存の管理体制を生かせます。後志(ニセコ)も、冬の管理需要が見込めます。
自社保有での運営:道央・道南で条件付き
自社で物件を持つ場合は、稼働の安定が最も重要です。季節偏在度が比較的小さい道央と道南が候補ですが、冬の除雪や暖房の費用を見込んだ運営計画が欠かせません。
収支3ケース:函館・空き家リノベ一棟貸し
工務店の強みが最も生きる「函館での空き家リノベ一棟貸し」について、民泊新法で年間の収支を試算しました。数値はすべて仮定値です。

前提条件は次のとおりです。
- 稼働日数:保守は北海道の民泊稼働指数(107日)、中間は107日と上限180日の中間(144日)、楽観は上限の180日
- 客室単価:道外からの宿泊観光客1人あたりの観光消費額は、2024年度の四半期平均で89,005円です(北海道)。4人組のうち宿泊費を6分の1とすると約5.9万円です。ただし道外客は旅程が長く交通費も含むと考えられるため、保守的に1棟1泊3.5万円を保守、その1.2倍を中間、1.5倍を楽観としました
- 経費:運営代行は売上の20%、予約サイト手数料は10%、清掃費は1回1.5万円(北海道の民泊の平均2.6泊ごとに1回)、暖房を含む光熱・消耗品・固定資産税・保険で年100万円としました
- 投資額:空き家の取得と改修で1,500万円と仮定しました
中間ケースでは、年間売上605万円、手残り240万円で、投資額に対する利回りは16.0%です。保守ケースでも手残り100万円、利回り6.7%を確保できる計算です。
ただし、これは営業日の制限を受けない立地が前提です。住居専用地域など条例の指定区域で家主不在型の民泊を営む場合、営業できるのは実質的に週末と年末年始に限られ、稼働日数は大きく下がります。物件を選ぶ段階で、用途地域と指定区域を必ず確認してください。
収益が見込めた段階で、旅館業法の簡易宿所の許可を取得すれば、180日の上限と条例の制限を受けずに営業できます。
■ minpac式 3行要約
- 新築は道央、空き家リノベは道南(函館)、運営代行は札幌が最有力
- 函館の一棟貸しは中間ケースで利回り16.0%、保守でも6.7%
- 条例の指定区域を避けることが、試算どおりの稼働の前提になる
第7章 現場の論点とリスク
数値には表れにくいものの、北海道で民泊事業を行う際に押さえておきたい論点を3つ挙げます。
冬の運営コストと設備
北海道の民泊では、除雪、暖房、水道管の凍結対策が欠かせません。冬の光熱費は本州より高くなり、凍結による水回りの故障は営業停止につながります。設計・改修の段階で、断熱と凍結防止を十分に織り込むことが重要です。
清掃・駆けつけ人材の確保
民泊新法では、宿泊者がいる間、苦情や緊急時に対応できる体制が求められます。ニセコや富良野のような季節集中型のエリアでは、繁忙期に清掃スタッフが不足しやすい傾向があります。地元の清掃業者や運営代行と、繁忙期の体制を事前に固めておく必要があります。
宿泊税と外国人客への対応
2026年4月から、民泊も北海道宿泊税の対象になりました。料金表示や予約サイトの設定、宿泊者への説明など、運営の手間が増えます。また、宿泊者の6割以上が外国人であるため、多言語の案内やハウスルールの整備が、近隣とのトラブルを防ぐうえで重要です。
■ minpac式 3行要約
- 断熱・暖房・凍結対策を設計段階から織り込む
- 季節集中型のエリアは、繁忙期の清掃人材を先に確保する
- 宿泊税の運用と多言語のハウスルール整備が欠かせない
次の一歩:候補地をminpac式で診断する
本記事は、北海道全体とエリア単位の傾向を示したものです。同じエリアでも、用途地域や条例の指定区域、駅や観光地からの距離、周辺の競合によって、収益は大きく変わります。北海道では特に、条例の指定区域に入るかどうかで営業できる日数がまったく違います。
候補地や保有物件がある場合は、「minpac式エリア診断」で、需要・周辺の回遊性・競合・規制・物件の強みを地点単位で診断します。工務店・不動産会社の新規事業として民泊を検討される際の判断材料としてご活用ください。
▶ minpac式エリア診断のお申し込み:(URL未確定)
次回は、別の都道府県の民泊市場を同じ物差しで分析します。北海道と比べることで、それぞれの県の特徴がより鮮明になるはずです。
出典
- 観光庁「宿泊旅行統計調査」2025年確定値(2026年7月6日公表)、2019年・2021〜2024年の各年確定値、2026年1〜7月第2次速報値、参考表(広域市町村別集計)2025年:https://www.mlit.go.jp/kankocho/tokei_hakusyo/shukuhakutokei.html
- 観光庁「住宅宿泊事業の宿泊実績について」2025年8月〜2026年7月分(2025年11月28日〜2026年9月30日に順次公表)、「住宅宿泊事業法に基づく届出及び登録の状況一覧」2021〜2026年の各年9月時点:https://www.mlit.go.jp/kankocho/minpaku/business/host/construction_situation.html
- 観光庁「民泊の実施制限に関する地方公共団体の条例のとりまとめについて」(令和3年4月1日時点):https://www.mlit.go.jp/kankocho/minpaku/content/001418351.pdf
- 北海道「北海道観光入込客数調査報告書 令和6(2024)年度」2025年9月:https://www.pref.hokkaido.lg.jp/kz/kkd/irikomi.html
- 総務省「令和5年住宅・土地統計調査」2023年10月1日時点(北海道 市町村別統計表、2024年11月8日公表):https://www.pref.hokkaido.lg.jp/ss/tuk/014hls/187783.html
- 北海道「北海道住宅宿泊事業の実施の制限に関する条例」2026年6月25日更新:https://www.pref.hokkaido.lg.jp/kz/kkd/minpaku/regulation.html
- 札幌市「札幌市住宅宿泊事業の実施の制限に関する条例」:https://www.city.sapporo.jp/ncms/reiki/d1w_reiki/H430901010008/H430901010008_j.html
- 北海道「北海道宿泊税について」:https://www.pref.hokkaido.lg.jp/kz/kkd/191976.html
(いずれも2026年10月7日に内容を確認)
免責事項
統計は各機関の公表値です。minpac式の各指標は公表値からの算出値です。収支試算は仮定に基づくもので、実際の収益を保証するものではありません。規制は執筆時点の情報で、事業化の前に各自治体・専門家への確認を推奨します。